2024 年 30 巻 2 号 p. 158-159
Ⅰ.目的
咀嚼などの顎口腔系の様々な機能運動は,咀嚼筋をはじめとした複数の筋が協調して活動することにより遂行されている.咀嚼筋は内部が複数に分画化された多羽状構造を有しており,各々の筋内においても機能的に分化していることが報告されている.これら咀嚼筋機能の特徴を把握するためには,筋電図解析が有用とされ,咬筋や側頭筋など表層の筋では主に表面筋電図を用いて検索されてきた.しかし,深部に位置する内・外側翼突筋においては,針電極やワイヤー電極が必要であり,技術的な難易度が高く,また筋活動導出部位の同定が難しく筋内各部での活動の詳細は未だ不明な点が多い.
一方,筋の機能的な特徴に対応する形態学的特徴の把握に関しては,Magnetic resonance imaging(以下MRI)を用いた画像解析が有効で,筋の三次元形態や分画構造が調査されてきた.しかし,多羽状構造を有する咀嚼筋内部の筋線維構造の詳細を把握するには至っておらず,そのため筋線維構造の特徴と機能的分化については十分にリンクしていない.特に,深部に位置する内・外側翼突筋に関してはそれらの情報は非常に少ない.
MRIシーケンスの一つであるDiffusion tensor imaging(以下DTI)は,組織内の水分子の拡散方向を探知し画像化する撮像法である.当分野では,このDTIを咬筋の筋線維形態を解析に応用し,咬筋筋線維描出に適切なDTI撮像条件を同定し,咬筋筋線維走行を非侵襲的に可視化する手法を報告した1).さらに異なる下顎位における咬筋内部の筋線維の配向性の変化様相を明らかにし2),加えてDTIによる筋線維描出においては被験者毎に適切な解析条件の設定が必要であることを考察した.
本研究は,これまで咬筋にて検討したDTIによる筋線維描出手法を,より深部に位置する内側翼突筋に応用し,①DTIによる筋線維描出を被験者個々で最適にするための解析パラメータの設定について検討を行った.②その解析条件にて描出した画像をもとに,内側翼突筋の筋線維構造の特徴および異なる下顎位に伴う,その筋線維動態について解析を行った.