日本顎口腔機能学会雑誌
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Herbst装置使用にともなう形態および機能の短期的変化
檜山 成寿小野 卓史石渡 靖夫黒田 敬之
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1996 年 3 巻 1 号 p. 47-52

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抄録

Herbst装置使用にともなう形態および機能の短期的変化について検討し, 筋機能の適応について考察することを目的として本実験を行った.
Angle Class II Division 1不正咬合患者女子4名を被験者とした.形態的評価は側面頭部X線規格写真トレースの重ね合わせにて行った.機能的評価として, 外側翼突筋下頭筋活動の変化について検討を加えた.外側翼突筋下頭筋活動記録には, 口腔内表面電極を用いた.
Herbst装置使用にともなって, 全症例において同様の形態的変化が観察された.すなわち, 上顎前歯の舌側傾斜, 上顎大臼歯の遠心移動, 下顎前歯の唇側傾斜, 下顎大臼歯の近心移動および明かな下顎骨の成長が観察された.一方, 下顎頭の位置的変化と外側翼突筋下頭筋活動との関連について検討した結果, 以下の所見が得られた.
1) 全症例において, 装置装着により下顎頭は大きく前下方へ移動し, それにともない外側翼突筋下頭筋活動は有意に増大した.
2) 装置装着から数カ月後, 3症例において下顎頭は装置装着前の位置よりも依然前下方へ位置していたが, 外側翼突筋下頭筋活動は全症例において装置装着前のレベルに減少した.
3) 装置撤去直後, 外側翼突筋下頭筋活動はわずかな形態的変化に反応して有意に増大した.
4) 装置撤去から2週間後, 筋活動は再び装置装着前のレベルに減少した.
以上の結果から, 筋機能は2週間という短期間のうちに新たな環境に適応し, これは, 形態の代償性の変化よりも早期に生じることが示された.

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