日本歯科保存学雑誌
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原著
歯科用レーザー使用と眼球への安全性 : 防護眼鏡着用下および顕微鏡下での使用について
三枝 英敏渡辺 聡安生 智郎海老原 新須田 英明
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キーワード: レーザー, 顕微鏡, 安全性
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2007 年 50 巻 4 号 p. 432-439

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抄録

本研究の目的は,レーザー用防護眼鏡および歯科用顕微鏡を介するレーザー光の透過エネルギーを検討することにより,レーザー使用時の眼球への安全性について考察することである.実験には,Nd:YAGレーザー,Er:YAGレーザー,半導体レーザーの3種類の歯科用レーザーを使用した.実験1では,各レーザーの導光用ファイバーまたはチップ(直径=400μm)先端とレーザー用サーモパイル吸収ヘッドとの距離を5cmとし,吸収ヘッドに各種防護眼鏡を固定,パワーメーターで200mJ,10pps,10sの条件にて透過エネルギーを測定した(n=3).防護眼鏡は,Nd:YAGレーザー用,Er:YAGレーザー用,半導体レーザー用および防塵眼鏡の4種類を使用し,レーザー光の直接照射をコントロールとした.実験2では,レーザーのファイバー先端と歯科刑顕微鏡の対物レンズとの距離を5cmとし,パワーメーターを接眼レンズに固定後,各レーザー専用の防護眼鏡を対物レンズまたは接眼レンズに固定,200mJ,10pps,10sの条件にて透過エネルギーを測定した.なお,レーザー光を顕微鏡鏡筒に直接照射したものをコントロールとした(n=3).各照射条件におけるレーザー光の透過エネルギーについて,各レーザーにおける眼球に対する最大許容露光量(MPE,JIS C 6802)を基準として比較検討した.実験1では,専用の防護眼鏡の使用により,すべてのレーザーにおいて透過エネルギーは0になった.しかし,Nd:YAGレーザー照射時は専用防護眼鏡以外で,また半導体レーザー照射時は専用眼鏡およびNd:YAGレーザー用防護眼鏡以外で,透過エネルギーはMPEを超える値となった.実験2では,専用防護眼鏡の使用により,すべてのレーザーにおいて防護眼鏡の位置にかかわらず透過エネルギーは0になった.しかし,専用防護眼鏡を使用しない場合,Nd:YAGレーザーおよび半導体レーザーでは透過エネルギーが検出された.以上より,他の防護眼鏡の使用や裸眼では,MPEを超える透過エネルギーが眼球に到達し,障害が生じる恐れがある.また本実験条件下では,顕微鏡下でのレーザー使用の際,専用防護眼鏡の着用時は透過エネルギーが0となり,安全に使用できると思われた.

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© 2007 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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