2008 年 51 巻 4 号 p. 419-425
今日,歯科臨床で行われている生活歯漂白法はオフィスブリーチング,コンビネーションブリーチングそしてホームブリーチングに分けることができる.本実験は,一般的に臨床で行われているそれぞれの手法に基づいた漂白効果を,褐色鶏卵卵殻にて比較するとともに,ヒトエナメル質表面に与える影響を調べることを目的とした.漂白効果に関しては,接触型の三刺激値直読式測色器を使用して,漂白前と任意の漂白過程で得られたL*値からΔL*を算出して比較した.また,同様にして得られたL*a*b*値からΔE*abを求めてΔE*abとΔL*の相関について検討し,漂白効果を簡易に表す方法について検証した.エナメル質表面に与える影響は,ヒト抜去歯のエナメル質を用いて,漂白前と漂白後の表面粗さをScanning Probe Microscopeにて調べ,得られたΔRaからそれぞれの漂白法がエナメル質表面に与える影響を調べた.その結果,以下の結論を得た.1. 漂白効果は,オフィスブリーチングにおいて最も著明であり,次いでコンビネーションブリーチング,ホームブリーチングの順であることが明瞭に観察された.2. おのおのの漂白法によるΔL*に関しては,オフィスブリーチングの1処理(3回)で約17.7のΔL*を示し,3処理(9回)で約24.9を示した.コンビネーションブリーチングでは1処理(3回)でオフィスブリーチングと同程度の約17.6のΔL*を示し,5,10,14回とホームブリーチングの回数が増えるに従って上昇し,14回でΔL*は約19.4を示した.ホームブリーチングでは回数が増えるに従って増加したが,14回においてもΔL*は約6.5であった.3. 漂白処理あるいは回数を基にしたΔL*とΔE*abの相関はすべての漂白法において0.90以上の値が得られた.4. ヒト抜去歯を用いて表面粗さをΔRaで調べた結果,オフィスブリーチングはコンビネーションブリーチング,ホームブリーチングよりも有意に表面粗さが大きな値を示し,コンビネーションブリーチングとホームブリーチングでは有意差を認めなかった.