日本歯科保存学雑誌
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原著
Self-adjusting FileとEDTA溶液による根管形成能の評価
平嶺 倫子鈴木 二郎藤巻 龍治岡田 周策石井 信之
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2016 年 59 巻 1 号 p. 103-110

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抄録

 目的 : 本研究は, 上下振動運動により駆動し, 根管形成と同時に根管洗浄を行うSelf-adjusting File (SAF) システムに, 組織刺激性が少ない弱アルカリ性EDTA溶液を根管洗浄液として使用し, 効果的な根管形成法であるかについて評価することを目的とした.
 材料と方法 : ヒト単根抜去歯30歯を6群 (各群n=5) に分類し, 歯冠切除後, K-fileを用いて#15にて穿通, 被験歯の作業長決定後#20までグライドパスを確認した. その後, SAFシステム3,000振動/分または5,000振動/分, 根管洗浄液として3%次亜塩素酸ナトリウム溶液あるいは弱アルカリ性3%EDTA溶液, 対照として蒸留水を用いた根管形成を行い, 脱灰象牙質の状態をナノインデンテーション法にて測定, さらに根尖部の根管象牙質スミヤー層除去効果を走査電子顕微鏡により評価した.
 成績 : 脱灰象牙質の押込み硬さ (HIT), マルテンス硬さ (HM) および押込み弾性率 (EIT) の各項目については, 各群間に統計学的有意差を認めなかった. また, SAFシステムは3,000振動/分にて5,000振動/分と同様にEDTA溶液群で, 次亜塩素酸ナトリウム溶液群および対照群よりも有意な根管象牙質スミヤー層除去効果を認めた.
 結論 : SAFシステムとEDTA溶液の組合せは, 根管内象牙質脱灰作用において対照群と有意差を認めなかった. また3,000振動/分または5,000振動/分いずれにおいても, 根管清掃が困難な根尖部根管の象牙質スミヤー層除去効果を有することが示された.

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© 2016 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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