日本歯科保存学雑誌
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原著
β-三リン酸カルシウムナノ粒子配合コラーゲンスキャフォールドのイヌ抜歯窩骨形成促進効果
加藤 昭人宮治 裕史小川 幸佑百瀬 赳人西田 絵利香村上 秀輔吉田 崇田中 佐織菅谷 勉川浪 雅光
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2016 年 59 巻 4 号 p. 351-358

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抄録

 目的 : β-三リン酸カルシウム (β-TCP) は骨補塡材として臨床応用されているが, 吸収が遅いため組織置換に時間を要することや, 残留材料の汚染による不良な治癒発現の問題がある. そこでわれわれはナノ化技術を応用し, ナノサイズ化したβ-TCP粒子をコラーゲンスポンジに配合したβ-TCPナノ粒子配合コラーゲンスキャフォールドを創製した. このスキャフォールドをラット頭蓋骨に応用した研究では, 骨増生効果が認められ, またコラーゲンスポンジよりもすみやかに吸収されることが報告された. そこで本研究では, β-TCPナノ粒子配合コラーゲンスキャフォールドをイヌ抜歯窩へ埋植して骨形成効果を評価した.

 材料と方法 : β-TCP粒子 (平均粒径2.3μm) をナノ粒子に粉砕後, コール酸ナトリウムを分散剤として, β-TCPの水分散液を作製した. 次にコラーゲンスポンジを分散液に浸漬した後, 洗浄乾燥してβ-TCPスキャフォールドを作製した. ナノ粒子の付着状態を観察するために, スキャフォールド表面のSEM観察を行った. イヌ抜歯窩埋植試験はビーグル犬の上顎第一前臼歯抜歯窩に, 実験群ではβ-TCPナノ粒子配合コラーゲンスキャフォールド, 対照群ではコラーゲンスポンジの埋植を行い, 経時的なエックス線写真撮影による評価, ならびに2, 5週後における組織学的評価を行った.

 結果 : SEM観察においてコラーゲンスポンジ線維表面に100nm程度のβ-TCPナノ粒子が認められ, スポンジ内部は粒子で埋まることなく維持されていた. 抜歯窩埋植試験の結果, 実験群のエックス線写真では対照群と比較して不透過性の亢進が早期に認められた. 組織学的観察では, 2週の実験群で抜歯窩内に既存骨から連続する新生骨が多く認められ, スキャフォールド内部に多量の細胞や血管を観察した. 一方, 2週対照群の新生骨はわずかであった. 5週の実験群では抜歯窩内に残存スキャフォールドは認められず, 中心部まで新生骨を認めた. 対照群5週では新生骨が観察されたが, 一部の標本では抜歯窩中心部が結合組織と残存コラーゲンスポンジで占められていた. 2週における新生骨形成率は, 実験群が対照群に比べて約3倍以上と有意に大きく, 埋植材残存率は, 実験群が有意に小さかった.

 結論 : β-TCPナノ粒子配合コラーゲンスキャフォールドは良好な生体親和性・吸収性を示し, イヌ抜歯窩の骨形成を促進した.

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