神経眼科
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症例短報
末期緑内障に巨細胞性動脈炎から生じた後部虚血性視神経症を呈した一例
新井 隆浩澤村 裕正庄田 宏文山本 一彦相原 一
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2017 年 34 巻 1 号 p. 54-60

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抄録

末期緑内障に巨細胞性動脈炎から生じた後部虚血性視神経症を呈した一例を報告する.症例は81歳,男性.25年来の進行性開放隅角緑内障があり当院通院中であった.再診時の視野検査時に左眼の視力低下を検査員に指摘された.左眼の矯正視力は光覚弁に低下していたが自覚症状は乏しかった.左眼の瞳孔領にフィブリン膜,虹彩後癒着,虹彩ルベオーシスをみとめ,RAPDの有無は不明であった.視神経乳頭は緑内障性の視神経萎縮をみとめたが前回診察時と比べても著変をみとめなかった.血液検査で炎症反応の高値をみとめ,造影MRIでは胸部大動脈,頸動脈,頭蓋内主幹動脈に造影後期の増強効果,壁肥厚をみとめたため側頭動脈生検を施行し巨細胞性動脈炎に合致する病理結果を得た.ステロイドパルス療法を施行したが左眼視力は光覚弁のまま不変で右眼視力の低下はみとめなかった.巨細胞性動脈炎により眼虚血が存在し後部虚血性視神経症を合併したものと推測された.急激な視力低下がみられた場合は,自覚症状が乏しくとも特に50歳以上の患者では巨細胞性動脈炎による後部虚血性視神経症も鑑別診断に挙げる必要がある.

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© 2017 日本神経眼科学会
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