抄録
症例は61歳, 男性. 2002年12月某日, 胸痛後の意識消失にて救急要請し, 心室細動 (VF) に対し電気的除細動を行った. Ca拮抗薬内服下の冠動脈造影検査においてアセチルコリン負荷試験を施行したところ, 冠攣縮が容易に誘発され, 冠攣縮性狭心症と診断した. 薬剤による冠攣縮の完全な抑制が不可能で, VF回避が困難と考えられたため, 植込み型除細動器 (ICD) 植え込みを行った. 以後Ca拮抗薬の内服を継続した. 経過中, 心電図上虚血性変化や心エコー上心機能異常の出現を認めなかった. 2007年3月某日, 十分量のCa拮抗薬内服下に, 睡眠中VFをきたし, ICD作動によりVFの停止を得た. この発作以後も心電図, 心エコー上の所見変化は認めなかった. VFの原因として薬剤抵抗性の冠攣縮性狭心症が考えられ, ICDにて救命し得た症例を経験したので報告する.