2010 年 42 巻 SUPPL.4 号 p. S4_195-S4_200
14歳の男児. 9歳時にBecker型筋ジストロフィ(BMD)の診断を受け, 車椅子生活をしている. 14歳8カ月時に数分の意識障害, 動悸を自覚し当科を受診した. 心胸郭比は0.56で, 心拍数210bpm, 右脚ブロックパターンの心室頻拍(VT)を認めた. 心エコーで著明な左室拡大, 左室駆出率(EF)0.18, 重度僧帽弁閉鎖不全を認め, 拡張型心筋症(DCM)の診断で入院した. 利尿薬により心不全は軽快し退院したが, その後, 再びVT, 心不全が増悪し再入院した. VTはメキシレチンの内服でコントロールされたが, 心不全はPDEIII阻害薬から離脱できなかった. 入院4週目頃から血圧低下を伴うVTがしばしば出現し, 入院6週目に意識消失を伴うVTが出現, 心停止となり, 蘇生後に呼吸管理を開始した. その後, 除細動器付心臓再同期療法(CRT-D)を施行したところ, EF 0.40と心機能が改善し, VT, 心不全も一時軽快したが, 4日後に肺炎を合併し死亡した.