心臓
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第22回 臨床不整脈研究会
右室ペーシングからup gradeした症例における心臓再同期療法の長期効果
新規植込み症例との比較検討
山崎 浩夛田 浩関口 幸夫五十嵐 都黒木 健司町野 毅小澤 真人成瀬 代士久井藤 葉子青沼 和隆
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2010 年 42 巻 SUPPL.4 号 p. S4_201-S4_207

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抄録

背景: 長期の右室ペーシングは心機能を低下させ心不全を惹起することがある. このような症例に心臓再同期療法(CRT)への “up grade” が有用であることが報告されたが, “up grade” 症例の患者背景, 長期効果および予後は, いまだ十分に明らかではない.
方法: 対象は右室ペーシングからCRTへのup gradeを施行した11例(up grade群)と左脚ブロックを有する難治性心不全に対し新規にCRTを施行した30例(de novo群). 患者背景, CRT前後の急性期血行動態変化および長期治療効果(左室リモデリング[左室収縮末期容積15%以上減少]の有無と観察期間中の心血管関連イベント)を両群間で比較した.
結果: Up grade群はde novo群に比して, CRT前のQRS幅(p<0.05), 左室駆出率(p<0.01), ならびに2次性心筋症を有する頻度(p<0.05)が大きかった. しかしながらCRT前の左室同期不全の程度(p=0.69), CRT前の急性期血行動態値(p=0.99), あるいは, その変化率(p=0.83)には両群間に差を認めなかった. 植込み後6カ月時点の左室リモデリングの程度(p=0.28)および観察期間中(1~276カ月)の心血管関連イベントの発生率にも両群間に差(p=0.63)は認めなかった.
結語: 左心機能低下症例に対する右室ペーシングからCRTへのup gradeは新規植込み症例と同等の急性期および長期効果が期待できる.

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© 2010 公益財団法人 日本心臓財団
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