抄録
症例は57歳, 男性. 失神歴·特記すべき家族歴なし. 2010年8月, 意識消失発作にて救急搬送され, 来院時ショック状態で, 心電図にてII·III·aVF·V2~V6誘導で著明なST上昇を認めた. 血行動態の破綻するserious electrical stormを起こし電気的除細動を頻回に施行. 緊急冠動脈造影で有意狭窄は認めず, 左室造影で心尖部血栓, たこつぼ様壁運動異常を認めた. 大動脈内バルーンパンピングにて管理したが, 再度electrical stormを起こした. Amio-darone hydrochloride 125mgの急速静注は無効で, nifekalant hydrochloride 15mgの急速投与で洞調律に復帰し維持し得た.
慢性期に施行した電気生理学的検査にて, 右室からの2連発期外刺激法にて急性期と同様の心室頻拍が出現したため, 植込み型除細動器移植術を施行. 心内膜心筋生検所見では炎症細胞の浸潤なく, 新旧の間質線維化混在所見が認められた. 99mTc-tetrofosmin心筋シンチグラフィにて急性期に認めた心尖部中心の全周性欠損像は, 慢性期には, ほぼ消失し収縮能の正常化を認めたため, 最終的に, たこつぼ型心筋症と診断された.
たこつぼ型心筋症急性期にショック, electrical storm, 心尖部の壁在血栓を認め, nifekalant hydrochlorideの投与が有効であった症例を経験したので報告する.