抄録
ファロー四徴症根治術後に2種類の心室頻拍(VT)が生じた症例. 根治手術は肺動脈弁輪周囲をパッチ(non-transannular patch)で拡張し, 心室中隔欠損症にパッチ縫合が行われていた. VT1は右脚ブロック型(心拍数180bpm), VT2は左脚ブロック型(心拍数180bpm)であった. Substrate mappingでは右室流出路と心室中隔に広範な低電位領域がみられた. VT1のマッピングでは2つの興奮波が8の字様に旋回しており, 1つは三尖弁と心室中隔パッチの間を伝導狭部として三尖弁周囲を旋回し, もう1つは右室流出路のパッチ周囲を旋回していた. 各々の伝導狭部からエントレイメントペーシングを行うとPPI(post pacing interval)はVT周期に一致した. さらにVT2は同様のリエントリー回路を興奮が逆旋回することによって生じた波形と考えられた. 心室中隔の狭部への高周波通電でVT1が停止し, その後はいずれのVTも誘発されなくなった. 2つの興奮波が8の字様に旋回するファロー四徴症根治術後のマクロリエントリーVTは稀と考え報告する.