2012 年 44 巻 SUPPL.1 号 p. S1_18
[背景] 自律神経活動異常を反映する指標であるheart rate turbulence(HRT)は,心筋梗塞後,患者のリスク評価において有用とされている.しかし,自律神経活動に影響を与えるβ遮断薬投与下でのHRTの有用性については明らかではない.本研究ではこの点に注目し評価を行った.
[方法] 対象はβ遮断薬を内服している心筋梗塞後患者連続318例(平均年齢69±11,男性162例)である.HRTは24時間ホルター心電図でturbulence onset(TO)とturbulence slope(TS)を測定し,TO>0%とTS<2.5msec/R-R 間隔の両方を満たした場合を陽性とした.エンドポイントは心臓死と定義された.
[結果] 対象患者のうち94例(30%)は心室期外収縮の出現が,わずかなどの理由でHRTの測定が困難であった.測定可能であった224例中77例(34%)がHRT陽性であった.観察期間807±399日間において24例(10%)がエンドポイントに達した.HRT陽性のハザード比は2.6(95%信頼区間1.1-5.7;p<0.02)であった.
[結語] β遮断薬投与下の心筋梗塞後,患者においてもHRTは心臓死の予測指標として有用であることが示された.