心臓
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第24回 心臓性急死研究会
虚血誘発性J波を呈し心室細動を生じた冠攣縮性狭心症の1例
中川 孝八木 哲夫滑川 明男石田 明彦山科 順裕櫻本 万治郎佐藤 英二
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2012 年 44 巻 SUPPL.2 号 p. S2_156

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抄録

患者は46歳,女性.東日本大震災で被災し体育館で避難生活をしていた.2011年4月某日の早朝,胸痛後に心肺停止となった.夫が心臓マッサージを行い,救急車内で自動体外式除細動器(AED)が作動し自己心拍が再開した.低体温療法を行い,後遺症なく回復した.AEDの記録ではJ波の出現とその著明な上昇の後に心室細動(VF)が生じていた.アセチルコリン負荷試験で右冠動脈と左前下降枝に高度な冠攣縮が誘発され,下壁誘導でAEDの記録と同様のJ波が出現した.冠攣縮性狭心症がVFの直接的な原因と考えられた.また,低カリウム血症,低マグネシウム血症,レニン・アルドステロン高値,血圧正常などの特徴からGitelman症候群と診断した.電解質補正後のQT間隔は正常で,心臓電気生理学的検査でVFは誘発不能だったが,電解質異常もVFに関与した可能性があった.植込み型除細動器(ICD)は本人が拒否したため,Caブロッカーなどの内服で経過観察中である.

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© 2012 公益財団法人 日本心臓財団
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