抄録
背景:J波は心電図上しばしばみられる所見であり,その予後は比較的良好と考えられていたが,不整脈の原因となるとも言われており,QRSの早期脱分極と心室細動(VF),突然死の関連も報告されている.
目的:当院における特発性心室細動(IVF)の特徴につき検討した.
対象:1979~2011年でVFが確認,もしくはCPA蘇生例で電気生理学的検査(EPS)を施行した患者17例.全例男性,平均年齢40歳,心機能は良好で全例CAG施行し,虚血は否定されている.
方法:J波は12誘導心電図で下壁,側壁誘導にノッチを認めるものとした.14例で加算平均心電図を施行.EPSは心室期外刺激を右室心尖部(RVA)と右室流出路(RVOT)からS3まで行いVFの誘発を試みた.
結果:J波を認めるIVFは11例で,下壁誘導8例,側壁誘導1例,両方が2例であった.Brugada症候群が3例,正常心電図を呈する症例が3例であった.LP陽性6/13例で認め,QT延長,短縮は認めなかった.EPSで16/17(94%)でVFが誘発された.15例でICDの植込みが施行されたが,その後の経過観察で適切作動,新イベントの発生はない.
結語:基礎心疾患のないVF症例では早期脱分極異常であるJ wave syndromeの存在を考える必要がある.