抄録
目的 : 糖尿病を合併した発作性心房細動 (AF) 例における抗不整脈薬療法の予防効果ならびに心血管予後について, 非合併例と比較する. 方法 : 対象はリズムコントロール療法を行った発作性AF505例 (男性341例, 女性164例, 平均年齢66±12歳) であり, 糖尿病合併群 (Ⅰ群, N=66) ならびに糖尿病非合併群 (Ⅱ群, N=439例) の2群に振り分け, 各群における抗不整脈薬による長期予防効果, 心血管予後を比較した (平均観察期間51±34カ月). 結果 : (1) 観察期間1カ月, 3カ月, 6カ月ならびに12カ月目のAF非再発率は, Ⅰ群85%, 74%, 56%, 44%, Ⅱ群88%, 77%, 69%, 58%であり, Ⅱ群に比しⅠ群が有意に低率であった (P=0.034). (2) 観察期間12カ月, 36カ月, 60カ月ならびに120カ月目の慢性化阻止率は, Ⅰ群94%, 83%, 77%, 71%, Ⅱ群96%, 92%, 89%, 85%であり, Ⅱ群に比しⅠ群が有意に低率であった (P=0.013). (3) 多変量解析では, 糖尿病合併例におけるAF慢性化の独立した予測因子は, 無症候性 (オッズ比=9.55, 95%信頼区間1.11-20.27, P=0.009), 病歴期間 (OR=1.01, 95%CI 1.00-1.02, P=0.040) であった. 結語 : 糖尿病合併の発作性AFは抗不整脈薬治療抵抗性の経過をたどる.