2016 年 48 巻 6 号 p. 608-616
腎動脈アブレーションでは両側腎動脈に高周波通電が行われているが, その根拠は明らかにされていない. 高周波通電が両側腎動脈に行われる理由を検証するため動物実験を行った. ビーグル犬を用いて血圧調整における左右腎交感神経興奮の効果を, 腎動脈高周波アブレーション前後の神経電気刺激の昇圧反応から検討した. 腎動脈にイリゲーションカテーテルを挿入して高周波通電を片側腎動脈に行い, 先端電極からの神経電気刺激をアブレーション前後で施行した. アブレーション前の神経電気刺激で昇圧速脈反応が左右腎動脈で同程度に誘発され, 心拍変動解析の交感神経指標と血中カテコラミン値も上昇した. アブレーションを施行した腎動脈では神経電気刺激による昇圧速脈反応は観察されなくなったが, アブレーションをしなかった腎動脈の神経電気刺激では, アブレーション前と同等の昇圧速脈反応が再度誘発された. 腎交感神経刺激による全身交感神経緊張は左右腎動脈で同等に生じ, 一側腎動脈アブレーションは, 対側腎動脈刺激の昇圧速脈誘発に影響を与えなかった. 腎動脈アブレーションで成果を得るには, 両側腎動脈通電が望まれることを支持する所見と思われる.