2016 年 48 巻 SUPPL.1 号 p. S1_130-S1_135
症例は72歳男性. 大腸がん手術前に多形性心室頻拍を, 手術後にたこつぼ心筋症を合併した既往があり, 人工肛門閉鎖術のため再入院となった. 麻酔を導入し皮膚切開後に, モニター心電図上, ST上昇から房室ブロックを生じ, その後持続性心室頻拍に移行した. 心肺蘇生中に心室頻拍は自然停止した. 心エコー図検査では心基部の過収縮と中間部から心尖部にかけての壁運動低下を認めた. 心電図上, Ⅰ, Ⅱ, Ⅲ, aVL, aVF, V2-V6誘導に陰性T波が出現した. 2週間後の心エコー図検査では壁運動はほぼ正常化した. 冠動脈の有意狭窄は認めず, 再発性たこつぼ心筋症が疑われた. 冠攣縮性狭心症の合併は否定できず, カルシウム拮抗薬を追加投与し, 以後心室頻拍の再発はない. 房室ブロックと心室頻拍を合併した, 再発性たこつぼ心筋症が疑われた1例を報告する.