2016 年 48 巻 SUPPL.1 号 p. S1_58-S1_64
症例は63歳男性. 自宅で突然心肺停止となり救急要請された. 救急隊接触時の初期波形はVFであり, 除細動後にPEAとなった. その後, 胸骨圧迫を継続しながら当院へ搬送された. 当院到着後もPEAであり, 直ちにPCPSによる補助循環を開始した. 第2病日, 胸骨圧迫の合併症と思われる縦隔血腫および両側血胸が出現した. 血圧は低下し, PCPS回路の脱血不良も合併したため, 出血源である左右内胸動脈への動脈塞栓術を行った. 濃厚赤血球および新鮮凍結血漿も大量に補充し, 血行動態の維持に努めた. さらに両側血胸による酸素化の悪化も認めたため, 胸腔ドレナージを行った. 出血量減少および酸素化の改善に伴い血行動態は安定し, 第6病日にPCPSから離脱した. 第33病日に行った心臓カテーテル検査では, 左右冠動脈ともに冠攣縮が誘発された. 第47病日にICD植込み術を施行, 第66病日にリハビリ転院となった. PCPS管理中に胸骨圧迫による出血性合併症を併発した1例を経験したので報告する.