2021 年 53 巻 10 号 p. 1070-1074
症例は83歳,男性.68歳時に徐脈性心房細動のためにVVI型ペースメーカーの植込みがなされた.78歳時に右室ペーシング依存による心機能低下(LVEF=35%)と心不全傾向を生じたため両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)へのアップグレードを実施された.その後心機能の改善(LVEF=65%)を認め,心不全による再入院および除細動器作動はなかった.日常生活動作は自立し安定して経過していたが,X年11月中旬に1人で入浴中に浴槽内において心肺停止状態で発見され,蘇生に反応せずに死亡した.CRT-Dのイベントレコードを確認すると,浴槽内への入浴後数分で心室細動を生じ1回の除細動で両心室ペーシングに復帰していたが蘇生に至らなかったことが判明した.死後のautopsy imagingでは急性呼吸窮迫症候群を示唆する像が得られた.入浴中の突然死の機序は未解明な点が多いが,本例ではCRT-Dにより入浴中の心事故の詳細が克明に記録された.致死性不整脈に対するCRT-Dの適正かつ有効作動によっても突然死を防げておらず,今後の入浴中の突然死予防への示唆に富む症例と考えられ報告する.