心臓
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[症例]
免疫グロブリン大量療法が奏功しなかった特発性血小板減少性紫斑病を伴う患者に対する開心術の1例
山崎 和裕境 次郎金光 ひでお坂本 和久武田 崇秀工藤 雅文辻 崇福嶋 崇志熊谷 基之川東 正英井出 雄二郎池田 義湊谷 謙司
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2021 年 53 巻 4 号 p. 369-373

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抄録

 77歳の男性.大動脈弁閉鎖不全症に対して他院にて外来フォローされていたが,胸部不快感出現のため当院に紹介入院となった.身体所見は,血圧134/40 mmHg,脈拍は60回/分で整であった.聴診上心尖部を中心に拡張期雑音を聴取した.心エコー検査にて左室駆出率55%,大動脈弁の心尖部まで到達する高度の逆流を認め,冠動脈造影検査では前下行枝に高度の狭窄を認めた.血液検査では貧血はなかったが,血小板数4.7×104/μLと減少していた.BNPは1389 pg/mLと高値であった.血小板数が低いが他の検査結果に異常はなかったため特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と診断された.胸部不快感と心不全があり,早期の手術が望ましいと考えた.血小板輸血で反応することを確認した上で免疫グロブリン大量療法を行って手術施行の方針とした.免疫グロブリンは400 mg/kg/日を術前3日前から5日間連日投与し大動脈弁置換術と冠動脈バイパス術を施行した.しかし手術時血小板数は増加せず,術中血小板輸血を必要とした.術後出血性の合併症はなかったが,血小板数は約50,000/μL前後で推移し術後35日目に退院した.ITPは高用量の免疫グロブリンは非常に効果的であると報告されているが,反応に乏しい患者もいる.今回は術中の血小板輸血で対応できたが,他の治療法を検討しておくことも重要と考えられた.

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