2021 年 53 巻 6 号 p. 575-581
症例は90歳女性.20XX年8月Y日より頭痛,気分不良を自覚していたが,夕方より嘔吐を繰り返したため来院した.来院時の血液検査ではCK-MB・トロポニンは正常であり,心電図においても異常を認めなかった.心エコーでは心基部に過収縮を認め,心尖部を中心に広範な壁運動低下を認めた.入院後,経時的に血液検査,心電図検査を施行し,入院12時間後に心電図でT波陰転化を認め,トロポニンIは微増,CK-MBは正常範囲内であった.第7病日に施行した冠動脈造影では有意狭窄病変は認めず,たこつぼ症候群と診断した.たこつぼ症候群は急性期にST上昇や陰性T波などの心電図異常を認めることが一般的であるが,超急性期では心電図異常を認めない例があることが報告されている.本症例も受診時に心電図変化,心筋逸脱酵素の上昇を認めず偶発的にたこつぼ症候群に典型的な左室壁運動異常を確認し,心電図異常が出現するまで経時的に心電図を観察し得た症例であり文献的考察を交えて報告する.