抄録
他の複雑心奇形合併のないEbstein奇形の心標本12例の形態学的観察および心内各部の計測を行い,木症の外科治療に関する検詞を行った.12例は,奇形が軽度の1群5例と,高度奇形のII群7例に大別され,おのおのの標本で三尖弁線維輪,右室側に落ち込んだ三尖弁附着部および心室中隔の関係が検討された.その結果,三尖弁挙上転移手術,つまり,右室側に落ち込んだ三尖弁附薪部を完全に本来の三尖弁輪に吊り上げることの可能性には多くの疑問がもたれた.一方,巨大な心房化右室の部分的縫縮は,症例によっては可能であると思われた.機能的右室壁の強度の葬薄化のため,三尖弁置換手術後の心機能が期待できない例には,右房肺動脈バイパス手術の適応が考えられた.