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Korner-Shillingford法の理論的再評価
立木 楷, 中村 隆
1978 年10 巻7 号 p.
661-668
発行日: 1978/07/01
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
心弁口の閉鎖不全(逆流)の定量的診断法として提唱されたKomer-Shillingford法について,色素希釈法の制御工学的・推計学的アブローチ,さらに流体力学的見地に立ってその意義を考察した.その結果,Korner-Shill-ingford法とは逆流が循環系のペクレ数を変えることを検出する方法といえ,理論的に妥当な血流の乱れの測定法である.
しかしながら,Korner-Shillingford法を用いて臨床例で弁逆流を診断するためには,実際面で1・2の修正を要する.すなわち,経験的に求められ意味のあいまいであった係数の値を捨て,直接的にペクレ数の算出が行われねばならない。このため問題の系の上・下流で色素濃度をdouble samplingし,系の伝達関数の変動として逆流を論ずるべきである.筆者の経験によれぽ,本変法の有用性は充分と推察される.
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特に簡便法およびシネアンジオ法との対比について
市原 利勝, 水野 欽司, 佐藤 彰, 管野 誠, 宇留賀 一夫
1978 年10 巻7 号 p.
669-675
発行日: 1978/07/01
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
心筋梗塞を含む38例の各種心疾患について,UCGとACG双方から求めたE・Fの対比を行い比較的良好な相関を得た.つぎに左室後壁の収縮性を示す指標としてPWE/Ddを選び,さらに左室の拡張期,収縮期の短軸の比(Dd/Ds)を新たに設定してこれらとUCG,ACGによるE・Fとの比較を試みた.その結果,これらの指標は梗塞例を除く限りUCG,ACGいずれより求めた,E・Fともよく対応することが知られた.Dd/DsはPemboの方法によるE・F算出の簡便式であり,E・F算出の早見表ともども臨床的に有用である.PWE/DdとDd/Dsを用いて区分することにより79%の例でACGによるE・Fの良否の判別がなされ,梗塞後asynergyを有する例が分離される傾向もうかがえた.簡便ながらこれら二指標は左心機能を反映するものとして期待が持たれる.
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松下 哲, 蔵本 築, 三船 順一郎, 桑島 巌, 坂井 誠, 岩崎 勤, 賀来 俊, 村上 元孝
1978 年10 巻7 号 p.
676-680
発行日: 1978/07/01
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
β
1遮断剤metoprolol 40mgを健常若年男子5名に1回経口投与し,血行動態,心収縮時相,血漿レニン活性,血中metoprolol量の経時的変動を検討した.心拍出量,心拍数の変動は投与1時間後がピークで,それぞれ前値に比し-39.9%,-19.7%と有意の減少を示し,6時聞後にはほぼ前値に復した.1回拍出係数についても同様であったが,血圧はほとんど変動を示さなかった.心収縮時相ではPEP,PEPc,QII,PEP/ETおよびICTの経時的変化は分散分析で有意であったが,各測定時点毎に前値と比較した場合には,2時間後のPEP,QIIのみに有意差を認めた.血漿レニン活性は,投与2,4,6時間後で有意の低下を示した.Metoprololの血中濃度のピークはほぼ投与1時間後にあり,下降は比較的ゆるやかで,その変動と血行動態の変化の発現,レニン分泌の抑制は平行して認められた.
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両室造影所見との対比
吉岡 春紀, 陣内 重三, 古荘 陽三, 戸次 久敏, 古賀 義則, 秋吉 俊則, 戸嶋 裕徳
1978 年10 巻7 号 p.
681-686
発行日: 1978/07/01
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
心エコー図法の導入により左室内径や心室中隔,左室後壁の厚さが比較的簡単に計測可能となり広く日常臨床に応用されている.しかし心室中隔原に関しては従来の方法ではこれを容易に計測し得ないためその信頼性はいまだ充分に検討されているとは言えない.
そこで心エコー図法を除けば生体で心室中隔を計測しうる唯一の方法であると考えられる両室造影法と心エコー図法による心室中隔厚の比較検討を行った.両方法の実測値では差がみられたが,拡張期において心エコー図法と両室造影法中部中隔との間によい相関(r=0.90P<0.OO1)が得られた.一方収縮期においてはよい相関を認めなかった.したがって両方法による正常値をおのおの定めておけば両方法,特に非観血的方法である心エコー図法は心室中隔肥厚の検出や特に拡張期中隔厚の計測に有用な方法であると考えられた.
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宮本 篤, 小林 毅, 安藤 譲二, 伊藤 一輔, 金森 勝士, 富田 籌夫, 本間 濶, 安田 寿一, 古館 正従
1978 年10 巻7 号 p.
687-693
発行日: 1978/07/01
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
虚血性心疾患を対象として運動負荷
201Tl心筋シンチグラフィーを行い,負荷前後の心筋局所灌流の動的な変化を観察した.さらに灌流異常の程度,拡がりなどをComputerから得られた心筋局所灌流変化率により客観的に評価し,心電図ならびに冠動脈写の所見と対比検討した.対象は虚血性心疾患,脚ブロック,健常者など計39例である.
結果:負荷陽性の労作性および労作安静狭心症18例中15例,梗塞後狭心症4例中全例安静時に存在しなかった新たな局所心筋欠損像が描出された.また,冠動脈造影を施行した15例中,負荷心筋イメージで新たな欠損像の描出された9例全例に冠動脈の有意な狭窄が確認された.心筋局所灌流変化率が低値を示した部位と冠血管病変とを対比するとその一致率は良好であった.これらの結果から本法によって非観血的,客観的に狭心症に伴う冠血管病変の動的な診断が高い信頼性をもって評価しうるものと思われた.
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大動脈左冠状動脈直接端側吻合による1治験例および手術術式とその適応に関する Review
鬼頭 義次, 川島 康生, 森 透, 橋本 聡一, 奥田 純一, 曲直部 寿夫, 南野 隆三
1978 年10 巻7 号 p.
694-702
発行日: 1978/07/01
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
左冠状動脈肺動脈異常起始症に対し異常開口部を肺動脈壁をflangeとして切除し,肺動脈本幹の背部において直接大動脈に端側吻合し治癒せしめた一例を報告すると共に内外の文献にみる結紮術および体動脈冠状動脈吻合術症例についてReviewを加えた.すなわち,左右短絡をみとめない症例,短絡をみとめるも1歳未満の症例は手術成績が不良の為結紮術の適応外と思う.左右短絡を有する1歳以上の症例のみが結紮術の適応とも思われるが“two coronary system”に比して生理的な冠循環が得られないという面では不利をまぬがれない.各病期において“two coronary system”再建を目的とした体動脈冠状動脈吻合法が最も望ましい手術方法と思う.
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高安 俊介, 永田 真人, 五味 昭彦, 服部 淳
1978 年10 巻7 号 p.
703-710
発行日: 1978/07/01
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
他の複雑心奇形合併のないEbstein奇形の心標本12例の形態学的観察および心内各部の計測を行い,木症の外科治療に関する検詞を行った.12例は,奇形が軽度の1群5例と,高度奇形のII群7例に大別され,おのおのの標本で三尖弁線維輪,右室側に落ち込んだ三尖弁附着部および心室中隔の関係が検討された.その結果,三尖弁挙上転移手術,つまり,右室側に落ち込んだ三尖弁附薪部を完全に本来の三尖弁輪に吊り上げることの可能性には多くの疑問がもたれた.一方,巨大な心房化右室の部分的縫縮は,症例によっては可能であると思われた.機能的右室壁の強度の葬薄化のため,三尖弁置換手術後の心機能が期待できない例には,右房肺動脈バイパス手術の適応が考えられた.
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小机 敏昭, 金子 俊昌, 久米 弘洋, 松井 道彦, 堀越 茂樹, 中西 成元, 鈴木 茂, 丸山 浩一, 松井 正治, 杉田 洋一, 佐 ...
1978 年10 巻7 号 p.
711-716
発行日: 1978/07/01
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
肺動脈狭窄症に合併する心内奇形には,心房中隔欠損症(ASD),心室中隔欠損症(VSD)が多い,が,動脈管開存症(PDA)が舎併する症例の報告は,文献的にみて少ない.その中で先天性風疹症候群の症例を検討してみると,肺動脈狭窄症とPDAの合併が,比較的多く見られる.
われわれは,軽いチアノーゼおよび運動制限を主訴として来院した,4歳,女児の肺動脈狭窄症(弁性狭窄および漏斗部狭窄)兼PDAの症例に対し,肺動脈弁切開漏斗部狭窄除去および動脈管閉鎖術を施行し,術後,呼吸管理に難渋したが,日がたつにつれ,右心室圧が下降し,チアノーゼが消失,運動量も増加した症例を経験した.この症例は,先天性風疹症候群を疑わせるようなこともなく,肺動脈分枝狭窄もなく,比較的まれな症例と思われる.
肺動脈狭窄症兼PDAの1治験例を報告するとともに,若干の文献的考察を加えた.
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坂井 明紀, 吉雄 幸治, 園田 康男, 御厨 美昭, 岩永 敦, 今村 俊之, 木村 南樹, 藤原 恒夫, 調 函治, 釘宮 敏定, 草場 ...
1978 年10 巻7 号 p.
717-724
発行日: 1978/07/01
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
近年両大血管右室起始症(DORV)の報告例が増加しつつあるが,その大部分は内臓・心房関係,心室ループ,大血管の位置関係の異常を伴わないVan PraaghのSDD型に属するものであり,大血管の1転位を伴うSDL型DORVは依然としてまれな存在である.
著者らはチアノーゼと労作時呼吸因難を主訴として来院した18歳女子に,右心および左心カテーテル検査,血管心臓造影検査などを行って,大動脈弁下型の心室申隔欠損ならびに肺動脈弁および弁下狭窄を伴うSDL型DORVと診断し,体外循環下に肺動脈弁切開,弁下狭窄除去と右心室内Conduit作成による根治手術を施行して,術後自他覚的症状の著しい改善がみられた症例を経験した.著者らの検索したかぎりでは,本症例はSDL型DORVの根治手術報告例としては世界で9例目,成功例では6例目の症例である.
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井上 宏司, 古瀬 彰, 三枝 正裕
1978 年10 巻7 号 p.
725-729
発行日: 1978/07/01
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
フリー
Coronary Sinus ASDは,心房中隔の卵円窩後下縁,心室中隔の弁上部,および下大静脈の開口部に囲まれた三角形の中に存在し,左心房内に開口する左上大静脈を伴うものであり,発生学的には,洞房部の発育不全によって起こるとされている.ここに呈示した症例は,左上大静脈を有していないが,発生学的に同一の範疇に入るものと考えられた。
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扇谷 信久, 田内 潤, 藤井 正満, 福井 須賀男, 森島 豊彦, 南野 隆三
1978 年10 巻7 号 p.
730-734
発行日: 1978/07/01
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
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Single coronary arteryはまれな先天性冠動脈異常である.Sharbaughらによると,1974年までに164例の報告があり,本邦では,著老らの知るところでは31例の報告がみられるのみである.これらの報告例には狭心症の合併および選択的冠動脈造影により冠動脈に有意の狭窄を認めたものはない.症例は56歳男子で狭心症を合併するSingle coronary arteryであり,主幹冠動脈は左冠動脈洞より起始した後,すぐに左右の冠動脈に相当する枝に分枝し,さらに左冠動脈は左前下行枝と左廻旋枝とに分かれ,その走行はほぼ正常であった.また,左前下行枝の中間部には75%の狭窄を認めた。本症例はSmithの分類のType2に属し,他の先天性心奇形あるいは虚血性疾患を合併しないかぎり,比較的予後の良いTypeである.
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安武 俊輔, 丹山 桂, 江里 健輔, 八牧 力雄, 前田 準也
1978 年10 巻7 号 p.
735-740
発行日: 1978/07/01
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
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先天性大動脈弁閉鎖不全症(心エコー図により大動脈弁は2尖弁であること確認)を有する20歳男子が,亜急性細菌性心内膜炎を舎併し,内科的治療を受けていたが,呼吸因難,心悸充進,発熱は次第に増強し,突然,右眼ならびに腎動脈塞栓症(右視力低下と高度の蛋白尿)および冠動脈塞栓症(心電図および心エコー図で確認)を併発し,不整脈,肝・脾腫脹,腹水,両下肢浮腫をきたしたので外科的治療を受けるため当科に転科した.血液培養により緑色連鎖状球菌が立証された.手術により大動脈弁は2尖弁であることを再確認し,これらは著しく肥厚・硬化,その上多数の炎症性沈腫が附着し,また大動脈起始部の弁輪上にmycotic aneurysmを認めた.Bjork-Shiley人工弁による大動脈弁置換と動脈瘤の縫縮を行い,術後1年5ヵ月の現在患者は元気に生活している.細菌性心内膜炎が合併していても抗生物質使用下に積極的に弁膜症に対し外科的治療を加えるべきことを強調する.
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高木 俊孝, 渡辺 勇, 福田 芳郎, 柴田 皓示
1978 年10 巻7 号 p.
741-747
発行日: 1978/07/01
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
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48歳,男性,慢性骨髄性白血病の加療中,完全房室ブロックによる痙攣発作とショックにより死亡した1剖検例で,剖検により,骨髄は低形成性で線維化が強く,白血病細胞浸潤は,睾丸,脾にわずかに認められるのみであるが,アスペルギールス感染が,心,肺,腎,腸,甲状線などに認められた.
汎アスペルーギルス感染症に伴う一臓器病変としての心臓の病理組織学的所見を中心にして報告するが,完全房室ブロックの発生原因がアスペルギールス感染症によるものであり,その病変の場は,His束貫通部を除く房室伝導系全般であることを,連続切片を作成し,病理組織学的に明らかになし得たきわめてまれな症例である.
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千種 弘章, 大井 勉, 宮本 覚, 西内 素, 中村 隆澄, 山家 武, 庄村 東洋, 吉栖 正之, 柳原 晧二, 吉川 純一, 山本 博 ...
1978 年10 巻7 号 p.
748-754
発行日: 1978/07/01
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
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冠状動脈硬化症に起因する心室瘤の切除例は本邦においてもかなり報告されるようになったが,心筋炎後に発生したと考えられる心室瘤切除例の報告は世界でもきわめて少ない.
われわれの経験した症例は36歳の男子で脳栓塞発作を主訴として来院精査の結果その血栓は心室瘤に起因するものと診断し手術を施行した.心室瘤は左室後壁と心尖部さらに右室壁の計3ヵ所に認められ,いずれも切除縫合した.なお瘤部以外の心筋は肉眼的にまったく正常と観察された.術後経過は順調で術後約1ヵ月目の検査でも満足すべき結果が得られた.切除標本の病理組織学的検索で左室瘤壁の心筋組織はすべて膠原線維と弾力線維に置換され,炎症反応や巨細胞形成もみられず,右室瘤壁の心筋実質の残存している部分にみられる中小動脈に内膜の浮腫状膨化と中膜の著明な求心性肥厚が観察され,心室瘤の成因は血管炎を合併する限局性の心筋炎(原因不明)が疑われた.
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村山 正博, 春見 建一, 真島 三郎, 下村 克朗, 村尾 覚
1978 年10 巻7 号 p.
755-765
発行日: 1978/07/01
公開日: 2013/05/24
ジャーナル
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