イヌ61頭において交感神経刺激(星状神経節,心室神経)によるST-T変化を観察した.右側神経刺激直後,左室前壁に一過性のST下降・T陰転出現,刺激開始数十秒後,前壁に著明なST下降・T陽転が生じ数分持続した.左室後壁ではそれらの対側性変化として初期の一過性ST上昇および後期の薯明なST上昇・T陰転が生じた.左側神経刺激では以上と対照的に左室後壁に一過性のST下降をみ,続いて著明なST下降・T陽転が生じ,同時に前壁に対側性変化を伴った.いずれの場合にも変化は星状神経節刺激の場合より心室神経刺激の場合一層著しかった.以上の変化は神経切断およびβ-ブロッカーにより阻止されたことから刺激された神経支配域心筋に発するカテコラミンの作用によると思われる.さらにD-C増幅による記録から初期変化は真のST下降,後期変化はTQ線の上昇によるみかけのST下降であることが知られた.