抄録
振動病の重要な臨床症状の1つに,振動負荷の加わった手指に発現する白ろう指(white finger)と呼ばれる局所的な循環不全があげられる.われわれは,従来より振動負荷後にみられる局所動脈平滑筋のノルアドレナリン感受性の増大がこの循環不全発現に重要な因子になり得ることを報告してきた.本研究においては,このノルアドレナリン感受性の増大とCa2+透過性の関係とを平滑筋細胞レベルで解析した.その結果,動脈平滑筋のノルアドレナリン,セロトニン,アンギオテンシンに対する反応性は振動刺激中に減弱し,負荷後一過性に増大した.発生張力抑制現象の発現機序として収縮蛋白架橋形成の力学的抑制を推定した.一方,生理的活性物質に対する反応性増強現象は,振動刺激によって生じたCa2+透過性亢進が刺激停止後しばらく残存しているとすれば説明できることが分かった.