心臓
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15 巻, 5 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 神宮 純江, 高橋 紀子, 生田 純男, 今村 英夫, 進藤 宗洋, 田中 宏暁
    1983 年 15 巻 5 号 p. 513-519
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    最近習慣的運動により降圧が得られることが示唆されている.われわれは保健所活動の一環として過去5年間,運動による健康作り教室を指導してきた,今回高血圧と運動に的をしぼり2つの面より検討し,次の結果を得た.(1)軽症高血圧者45例を対象にして,最大酸素摂取量(VO2max)の50%の運動を1回20分間以上,週3日以上の頻度で3~4カ月行うことによって,平均血圧が女性で108.5±1.7mmHg(平均値±標準誤差)から103.1±2.2mmHg(P<0.01)へ,男性で110.7±2.1mmHgから103.2±2.2mmHg(P<0.01)へど有意の降圧が得られた.(2)体力の指標である最大酸素摂取量により受講者を3クラスに分けて血圧値との相関を検討した結果,体力の劣る者ほど血圧が高く,高血圧の頻度も高かった.(3)以上より軽症高血圧に習慣的な運動は降圧効果が期待しうること,および活動的な生活習慣は高血圧の予防に効果があると思われた.
  • 横山 正一, 鏑木 恒男, 高山 真一, 鷹津 良樹, 土屋 典男, 紀田 貢, 服部 文雄, 森 典子, 星野 恒雄
    1983 年 15 巻 5 号 p. 520-525
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Nicardipine lmgを血管内投与して,心刺激伝導系に対する作用について,心房早期刺激法とHis束心電図法を用いてVerapamil 10mgと比較しつつ検討した.対象は発作性上室性頻拍症とその疑いの11例,sick sinussyndrome 8例,その他3例の計22例である.両薬剤で血圧はともに有意に降圧したが, Verapamilでは洞機能はほぼ不変,房室伝導は明らかに抑制されたのに対してNicardipineではこれらは有意に促進された.これは急速な降圧に伴う循環反射,すなわち交感神経系の緊張が直接作用としての抑制効果を上回ったためと考えられる.心房内と心室内伝導は両薬剤で影響を受けなかった.Nicardipineによるこれらの結果はNifedipineでの報告に類似しており,同様に房室ブロックは起こしにくい代わりにVerapamilのごとき抗不整脈作用はあまり期待できないものと思われる.
  • 栗田 明, William Ganz
    1983 年 15 巻 5 号 p. 526-532
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    2個のサーミスター(Th1,2)を5Fカテーテルの先端とその約5cm近位部に装着したカテーテルを試作し,雑種成犬の冠状静脈洞(CS)側より大心静脈(GCV)まで挿入することにより,Th1でGCV流量(F)を,Th2でCSFをそれぞれ熱希釈法を用いて測定するとともに,左前下行枝(LAD)と左回旋枝(Cfx)の流量(F)を電磁流量計を用いて測定し,冠状動脈流入量と流出量を種々の条件下において調べた.その結果,安静時のLADFはGCVFにほぼ等しく,CfxFは(CS-GCV)Fにほぼ等しかった.LADを結紮するか,nitroglycerinを注入するなどの負荷を加えると,この流量の変化はGCVとCS側によく現れ,一方Cfxに同様な負荷を加えると流量の変化はGCV側にほとんど影響はないか,あってもわずかで大部分はCS側に現れた.冠状動脈流入量と流出量との関係はLADFとGCVFとの間に, r=0.94(n=167,P<0.001),CfxFと(CS-GCV)Fとの間にr=0.97(n=167,P<O.O01),(LAD+Cfx)FとCSFとの間にr=0.98(n=199, p<0.001)なる極めて良い有意の関係が得られた.以上の成績は静脈側から選択的に冠状動脈流量を測定しうる妥当性を実験的に裏付けるものと思われる.
  • 八巻 重雄
    1983 年 15 巻 5 号 p. 533-543
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    原発性肺高血圧症40例の肺組織標本について肺血管病変の重症度と肺小動脈中膜の肥厚程度に関する組織計測を行い,若年者群(16歳未満例)と成人群に分けて比較した.
    両群ともに進行したplexogenic pulmonary arteriopathyが認められ,中膜は正常例や慢性肺血栓症より明らかに厚く肥厚していた.また血管収縮の度合が強い症例ほど中膜も厚く,病因として機能的な血管収縮の充進が考えられた.
    若年者群では成人群に比べ中膜の厚さに差はなかったものの,病悩期間が短く,高度の肺血管病変も少なかった.また,成人群では中膜厚と肺血管病変の間に相関がみられたが若年者群では無相関であった.以上の事実から成人例では機能的な血管収縮の進行が緩慢で中膜肥厚も徐々に起こり,plexogenic pulmonary arteriopathyも定形的に進行するが,若年者では血管収縮が急激に強く発症するために,血管攣縮が高度で中膜壊死から叢状病変に突然陥ってしまうと推測された.
    なお,40例中特に成人例の10例に慢性肺血栓症の合併,2例に膠原病の合併を認めた.
  • activator Ca2+の関与
    大橋 俊夫, 東 健彦
    1983 年 15 巻 5 号 p. 544-549
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    振動病の重要な臨床症状の1つに,振動負荷の加わった手指に発現する白ろう指(white finger)と呼ばれる局所的な循環不全があげられる.われわれは,従来より振動負荷後にみられる局所動脈平滑筋のノルアドレナリン感受性の増大がこの循環不全発現に重要な因子になり得ることを報告してきた.本研究においては,このノルアドレナリン感受性の増大とCa2+透過性の関係とを平滑筋細胞レベルで解析した.その結果,動脈平滑筋のノルアドレナリン,セロトニン,アンギオテンシンに対する反応性は振動刺激中に減弱し,負荷後一過性に増大した.発生張力抑制現象の発現機序として収縮蛋白架橋形成の力学的抑制を推定した.一方,生理的活性物質に対する反応性増強現象は,振動刺激によって生じたCa2+透過性亢進が刺激停止後しばらく残存しているとすれば説明できることが分かった.
  • 茅野 眞男, 西川 邦, 小島 昌治, 薄葉 文彦, 後藤 敏夫
    1983 年 15 巻 5 号 p. 550-556
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    突然死例では状態の急変から一般にどのくらいの時間で心停止してくるのかを知ることは,救急医療にとって重要であるが,本邦での検討は少ない.われわれは心筋梗塞の診断で退院した216例に追跡調査(平均4.3年)を行った.心臓死は34例で,うち29例が24時間以内に死亡(突然死)した.突然死を症状発現から心停止までの時間により,1分以内の死亡(瞬間死)16例と,数分から24時間以内の死亡(急死)13例とに2分した.心筋梗塞後に労作性狭心症または失神を有する例は,急死より瞬間死で死亡することが多かった(P<0.01).また,突然死例中前壁梗塞の既往のある例では急死より瞬間死を起こしやすかった(P<0.01).一方冠動脈狭窄所見,Holter心電図所見は,急死,瞬間死群間で差がなかった.瞬間死は75%の例で,午前6~9時と午後6~9時の6時間の間に発生した.以上のように突然死例中瞬間死が55%も占めることを踏まえて,今後の救急医療体制の整備が望まれよう.
  • 澁谷 利雄, 水野 杏一, 菅原 博子, 荒川 宏, 里村 公生, 五十嶋 一成, 大鈴 文孝, 青崎 登, 栗田 明, 細野 清士, 山田 ...
    1983 年 15 巻 5 号 p. 557-562
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Ear-lobe crease(EC)に関してこれまでにいくつかの報告があるが,詳細なものは少なく,その有用性については議論のあるところである.著者らは,ECの臨床診断学的意義について検討を行った.
    冠動脈造影で確かめられた冠動脈疾患(CAD)を有する患者82例とCADのない65例を対象に,ECとCAD,冠危険因子および眼底の動脈硬化性変化の関連性について調べた.
    ECはCAD,男性,喫煙歴と有意の関連があり,かつ加齢とともにECの陽性率が増加する傾向があった.ECとCADの関連をより明確にするため,EC陽性群とEC陰性群の間で性と年齢のm atchingを行い, 再び検討したところ,ECはCADのみと有意の関連があった.よって,ECはCADの有無を予測するのに有用なsignであると思われた.
  • 脇屋 義彦, 内田 博, 友常 一洋, 横須賀 務, 桜井 秀彦, 加納 達二, 北村 和夫, 渡辺 幹夫, 鈴木 章夫
    1983 年 15 巻 5 号 p. 563-567
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞後の左心室瘤を有する43症例を対象として,左室造影所見から心室瘤切除の適応についての検討を行った.
    RAO30°にて行った左室造影からKennedy法に従って,拡張期および収縮期の左心室容積を求め,EFを算出した.次いで,心室瘤部を心室に内接する球の一部と仮定し,心室瘤部の容積をその内接する球の一部の容積を算出することによって求めた.心室瘤部は収縮しないから, この部分を除いたEFを求めれば, その症例の心室瘤を切除した場合の残存心筋によるEFとなる.その結果, EFが0.3以上で心室瘤容積が30~50mlの症例および心室瘤容積が50~100mlの症例は, 残存心筋のみによる仮想のEF改善は良好であり,心室瘤切除の良い適応となることが推定された.一方,心室瘤容積30ml以下の群は仮想のEFの改善はごくわずかであり,100ml以上の群では切除前のEF値が低値すぎるため,いずれも心室瘤切除の良い適応とは考えにくかった.
  • 電極および生体側合併症の検討
    古田 陽一郎, 田辺 章弘, 松村 順, 藤山 増昭, 池田 秀夫, 戸嶋 裕徳
    1983 年 15 巻 5 号 p. 568-573
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    昭和42年6月より昭和57年4月までに人工ペースメーカー植え込み術を施行した386症例を対象に,術後合併症について検討した.
    電極を主体とするPacing不全は,電極断線12例(2.8%),電極尖端移動24例(6.0%),閾値上昇10例(2.3%)の発生をみたが,死亡例はなかった.また,Sensing不全は5例(1.3%)にみられ,Undersensing 1例,Oversensing 4例であった.
    生体側合併症は圧迫壊死18例(2.9%),筋攣縮17例(4.4%),ペースメーカー症候群8例(2.1%),塞栓症20例(5.2%)であり,塞栓症の7例が死亡した.
    以上の各合併症について,その変遷と対策を考察し,さらに死亡57例(14.8%)の死因についても検討を加えた.
  • 梅沢 滋男, 杉本 圭市, 藤原 秀臣, 谷口 興一
    1983 年 15 巻 5 号 p. 574-578
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Pecemaker植え込み後3週間で電極接合部への体液浸入により,また,10カ月後には細菌性心内膜炎によると考えられる刺激閾値の上昇によりpacing failureを呈した症例を経験したので報告する.症例は71歳の男性.昭和56年4月,2度の房室ブロックの徐脈でpacemakerを植え込んだ.3週間後にpacing failureを呈し,精査の結果,電極接合部への体液浸入によるcurrent leakageがその原因と考えられ, 清拭にて正常pacingとなった.その後10カ月目に発熱が持続し,血液培養陽性のため細菌性心内膜炎と診断したが, そのころよりpacing failure,undersensingが出現した.精査の結果,電極接合部に体液の浸入が認められたが,清拭にても刺激閾値は3.6Vと異常高値を呈したため,細菌性心内膜炎により刺激閾値の上昇をきたし,pacemaker作動異常を呈したと考え,心内膜電極を用手的に抜去し,心筋電極に交換した.その後は抗生物質も奏効し,順調に経過した.
  • 堀江 稔, 西田 進一郎, 永尾 正男, 滝沢 明憲, 表 信吾, 泰江 弘文, 伊藤 忠弘, 千原 幸司, 島本 光臣, 篠崎 拓, 秋山 ...
    1983 年 15 巻 5 号 p. 579-585
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    昭和45年12月,当院CCU開設以来,昭和56年12月までに,心臓破裂症例は13名(急性心筋梗塞入院患者549名の2.4%)を数え,その4例に心ポンプ失調が合併しており,うち3例は最近3年間に経験し報告した.心ポプ失調合併例では,非合併例に比し,梗塞発症より心ン臓破裂に至るまでの期間が長かった.うち2例に対し,緊急に外科的治療を行い,いわわる,subacute heartruptureを考えられた1例は心臓破裂死を免れた.当院における,Dopamine,持続血行動態監視,IABP(intraaortic baloon pumping)導入前後での心臓破裂の発生数,死亡率等の検討では,急性心筋梗塞死亡に対する比率は,導入以前6.3%,以降16.7%(平均11.0%)と著増しており,今後,さらにintensive careが進むとともに心臓破裂の相対的増加が予想された.
  • 田所 正路, 石沢 栄次, 佐藤 成和, 加畑 治, 香川 謙, 堀内 藤吾, 吉田 芳郎
    1983 年 15 巻 5 号 p. 586-590
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    一側房室弁閉鎖と単心室の共存は極めてまれな先天性心奇形であり,報告例も少ない.症例は生後26日の女児で,心不全,呼吸不全を呈して来院し,超音波検査法などにより僧帽弁閉鎖と単心室が考えられた.心カテーテル,心血管造影検査で,動脈管を伴う大動脈縮窄,または大動脈弓離断の合併が確認され,動脈管閉鎖術と大動脈弓形成術,肺動脈絞扼術が予定されたが,一般状態の急速な増悪により術前に死亡した.剖検で,左房性房室弁閉鎖を伴った単心室症と判明した.房室弁,機能し得る心室を1つずつしか持たない本症は現在のところ根治手術の対象とはなり得ず,姑息手術としては,他の合併奇形によって決定される要素が多くなる.本症の外科治療に対する検討と文献的考察を加えた
  • 布田 伸一, 元田 憲, 一二三 宣秀, 多賀 邦章, 安田 紀久雄, 清水 賢巳, 岩井 久和, 竹田 亮祐, 谷口 昂
    1983 年 15 巻 5 号 p. 591-598
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    55歳女性,動悸・呼吸困難にて入院.家族歴で,妹に高血圧・蛋白尿・心疾患,息子に無汗症・蛋白尿・自律神経失調症を認めた.現症ではFabry病を疑う所見なく,胸部X線上,心胸比64%,心電図で左室肥大所見を示しPQ間隔0.13秒,心エコー図で心室壁の肥厚と層状エコーを認め,心機図で左室拡張機能障害を認めた.心臓カテーテル検査により左室拡張末期圧の著明な上昇,スペード型左室造影像,心室壁肥厚を認め,肥大型心筋症を疑い右室心筋生検を施行した.組織像はレース編み状の高度変性像でFabry病が疑われ,尿中糖脂質の薄層クロマトグラフィーにてCTH増加を認め,リンパ球α-D-galactosidase活性測定にて息子はhemizygote,患者はheterozygoteと診断された. 妹は胸部X 線で心拡大,心電図で左室肥大とPQ短縮を認め,病歴と合わせFabry病heterozygoteが疑われた.本症例は肥大型心筋症が疑われたが心筋生検でFabry病の診断がなされた1例で,心筋生検の有用性が示された.
  • 張 念中, 清水 満, 藤原 直, 桜井 秀彦, 西條 敬, 岡田 了三, 北村 和夫, 福田 芳郎
    1983 年 15 巻 5 号 p. 599-604
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    69歳,男,25年に及ぶ慢性関節リウマチに罹患中に大動脈弁狭窄兼閉鎖不全,狭心症を合併し,急性左心不全により死亡した.心電図は1度房室ブロック兼右脚ブロック,心臓超音波検査で大動脈弁の硬化,変形と左心室の拡張,肥大を示した.剖検所見は,心重量560gで,左心室の強い拡張性肥大,2尖大動脈弁に重なる慢性弁膜炎,線維症,石灰化による大動脈弁狭窄兼閉鎖不全,冠状動脈近位側の75%に及ぶアテローム性硬化による狭窄,末梢側心筋内小動脈の血管炎による狭窄の合併,心筋線維症などであった.冠状動脈,弁膜,心筋病変は慢性関節リウマチによる慢性炎症の上に加齢,ステロイドなど治療による修飾が重なったものと推定された.
  • 瀬瀬 顯, 岩尾 初雄, 益田 宗孝, 角 秀秋, 安井 久喬
    1983 年 15 巻 5 号 p. 605-610
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    生直後よりうっ血性心不全を起こし,内科的治療にもかかわらず呼吸状態が悪化していった生後21日目,体重2,500gの男児に対し,体外循環下に大動脈弁交連切開術を行い,救命することができた.術前心臓カテーテル検査にて約90mmHgの左室・大腿動脈間圧較差が存在し,大動脈弁は2弁で強い弁性狭窄を認めた.体外循環の方法は右房に脱血カニューレ1本挿入した常温体外循環とし,左室ベント,心筋保護法は用いなかった.大動脈弁口より左室内にFoleyのバルーン・カテーテルを挿入し,左室流出路を閉塞し血液の噴出を防ぎ,大動脈弁交連切開を行った.術後の左心機能の改善は著しく,左室拡張末期容積指数は術前の31.6ml/m2より47.8ml/m2まで増大していた.術後6カ月の現在,体重は4,700gまで増加し,順調に発育している.
  • 幸治 隆一, 村田 幸雄, 東山 領, 田中 裕, 石原 明徳, 竹沢 英郎
    1983 年 15 巻 5 号 p. 611-616
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    僧帽弁逸脱に大動脈弁逸脱を合併した症例報告である.症例は55歳,男子で初診時,心尖部で収縮後期雑音のみ聴取したものが,6年間の経過中に,その収縮期雑音は増強しLevine V度の全収縮期雑音になり,さらにII度の拡張期雑音も聴取するようになった.そして超音波断層上,僧帽弁は両尖,特に後尖の逸脱を,大動脈弁は右冠尖の逸脱を認めた.しかもM-modeでは右冠尖は拡張期にflutteringを示しfloppy valve の所見を呈していた.さらに本症例は感染性心内膜炎を併発し死亡した.剖検所見で, 大動脈弁はmyxomatous degenerationを,そして僧帽弁はmyxomatous changeに加え炎症性変化を,さらに三尖弁にもmyxomatous degenerationがみられた.すなわち,僧帽弁逸脱が時間の経過とともに増悪化し,しかも大動脈弁逸脱まで合併した症例であるが,単弁逸脱から連合弁逸脱に進行したことを認めた1例である.
  • 藤原 正文, 舟山 直樹, 登坂 聡, 羽根田 俊, 山下 裕久, 飛世 克之, 坂井 英一, 小野寺 壮吉, 竹内 克彦, 藤田 昌宏
    1983 年 15 巻 5 号 p. 617-622
    発行日: 1983/05/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は37歳の男性で,前胸部圧迫感,呼吸困難を主訴として来院.胸部X線で著明な心拡大を呈し,Mモードおよび断層心エコー図法で心嚢液貯留と心嚢内の腫瘤像を認め,さらに心嚢気体造影法を行い心嚢内に発育した多房性の腫瘍を確認し,入院後第4週間目に腫瘍摘出術を施行した.術後,心嚢液貯留による心タンポナーデ症状は軽映し,病理組織学的に悪性胸腺腫と診断された.術前に頻回に行った心嚢穿刺による心嚢液の細胞診では悪性腫瘍細胞は検出されず診断に非常に困難をきたしたが,心嚢気体造影法によって腫瘍の全体像(部位,形状)を明確にすることができ,術前検討に有用な情報を得ることができた.
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