体表面電位図から心電図逆問題によって心筋障害の部位と大きさを推定する手法の精度を検討するため,体外環流式凍結法による限局性の心筋変性作製法を考案し,実験動物を用いて心外膜,体表面上の電位と凍結処置による変化を観察した.また心筋変性の限局性を組織標本によって確認した.
本実験法の特徴は,(1)凍結手技により限局性の心筋変性が任意の位置と大きさで作製できる,(2)体外環流法により,閉胸した状態で凍結開始直後から電位計測ができる,(3)心電図波形を観察しながら,冷媒注入量・注入速度を変えて凍結変性の程度を調節できる,の3点にまとめられる.
心外膜電位は,凍結処置を行った部位を中心とする誘導で著明なST上昇を認めたが,電位図の変化は心外膜上で明瞭な限局性変化を記録したのに対し,体表面上の変化の境界はなだらかで,胸腔内伝播過程による平滑化の影響が明らかにされた.