15歳以下の小児18例に対し行った19回の人工弁置換術の経験から小児人工弁置換術の問題点を術後早期の合併症を中心に検討した.
対象症例は生体弁機能不全が9例,前回手術後に弁膜症が再発あるいは続発したものが5例,今回初めて手術を受けたものが4例であった.手術は左側房室弁を含む僧帽弁置換術が12例,apico-aortic bypassを含む大動脈弁置換術が3例,それに帽僧弁と三尖弁の両弁置換術,三尖弁置換術,Rastelli手術後のconduit内生体弁の再置換術がそれぞれ1例ずつであった.
術後早期の合併症はLOSが5例,房室ブロック4例,脳障害と創部前縦隔洞炎が各1例であった.LOSの5例は死亡し,房室ブロックの2例にpermanent pacemakerの植え込みを必要とした.これら術後合併症の主な原因は反復手術による癒着剥離の困難術前からの心筋障害,術中心筋保護法の不適切などであった.小児人工弁置換術は適応を厳密にすると同時に,使用人工弁の種類の選択を含めた長期的な治療計画の確立が重要と思われる.