1984 年 16 巻 1 号 p. 38-47
第3世代のCTを用いて, 僧帽弁狭窄症を主体とする僧帽弁膜症にみられた左房内壁在血栓と左房粘液腫のCT所見を対比検討した. 壁在血栓の場合, 僧帽弁の石灰化を認め, 内部構造が不均一で石灰化を示す例もみられ, 形も不規則であるのに対し, 粘液腫では, 僧帽弁の石灰化はなく, 内部構造は比較的均一で卵形を呈していた. さらに, 心電図同期法により, 拡張期に左室へ逸脱し, 収縮期に左房内へ戻る比較的規則正しい腫瘍の振り子様運動が観察された. CT値は一般に血栓に比して低値を示す傾向がみられた. したがって, 両者の診断には形態, 内部構造, CT値,動態, および僧帽弁の石灰化の有無に注目することが重要であり, これらの所見の総合的評価によって鑑別が可能と考えられる. また, 冠状動脈造影で特に左心耳に hypervascularityの検出された僧帽弁膜症では, 血栓の有無を確認するため, 積極的にCTを施行し, 手術所見と対比検討すべきと考えられる.