心臓
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症例 魚骨誤飲により大動脈穿孔を来した食道ろう孔の1例
及川 仁元渡辺 坦伊勢 忠男本良 いよ子小田島 秀夫大藤 高志
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1984 年 16 巻 11 号 p. 1207-1211

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抄録

異物による食道穿孔を起こし,さらにこれが心・大血管と交通し致死的大出血をきたす例はまれであり,異物誤飲の確認がないと確診は困難である.症例は60歳男子で,“魚骨を呑みこんだ感じ”とともに前胸部~心窩部に疼痛をきたし,心筋梗塞の疑いで入院した.入院時検査では白血球増多,CRP陽性を認めたが,心電図・生化学的検査などに急性梗塞を思わせる所見なく,抗生剤などの対症的治療を行いつつ種々の検査を施行した.入院後胸痛は軽減の傾向にあり経口摂取も可能であった.第10病日に前胸部~背部にわたる激痛が出現,解離性大動脈瘤を疑いCT検査を行ったが陽性所見なく,検査中数回の少量吐血をみた.第11病日大量の吐血をきたしショック状態が進展して死亡した.剖検では消化管・胸腔に大量の凝血,食道と下行大動脈問の交通,および縦隔洞間質の壊死性血腫の中心に約4cmの鋭い魚骨が認められた.異物起因の既往が確認されず,不定の胸部症状のため診断前に死亡した例であるが,早期の外科療法により救命の可能性もあるので報告する.

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