抄録
近年,atrial contributionを生かした生理的ペーシングが盛んに行われるようになってきている.しかし,心房細動例にこの方法は使えない.心室の興奮が心室ペーシング(VVI)によってなされた場合,刺激伝導系を介して正常に行われた場合に比べると,心ポンプ機能は10%以上低下するという.
そこで,VVIにおける心ポンプ機能を改善するためのもう1つの生理的ペーシングとしての両室ペーシングの心機能に対する効果について,心収縮時相を用いて検討した.
atrial contributionの影響を無くするために,心房細動を合併した各種心疾患7例を対象とした.その結果,両室ペーシングでは,右室あるいは左室ペーシングよりもS-2A(ペースメーカースパイクからII音大動脈弁成分までの時間),PEP(前駆出期)およびPEP/ET(ET:左室駆出時間)は低値を示した.2)両室ペーシングでは,右室ペーシングよりも,長いLVET(左室駆出時間)が得られた.
以上より,両室ペーシングは,左室収縮の同時性の点で,右室あるいは左室ペーシングよりも優れていることが示唆された.