心臓
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症例 溶血性貧血を合併した肥大型閉塞性心筋症の1例
川端 美緒西山 玄洋佐藤 毅日鼻 靖綱川 宏春見 建一滝沢 芳夫森 啓新倉 春男道端 哲郎森本 和大
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1988 年 20 巻 10 号 p. 1239-1244

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抄録
肥大型心筋症に合併した溶血性貧血は極めてまれで外国において6例,本邦においては感染性心内膜炎を合併した1例をみるにすぎない.今回我々は心症状の悪化に伴って,溶血の進行を認めたHOCMの1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は57歳女性で,昭和61年1月,労作時呼吸困難を主訴として来院,心エコー図上HOCMと診断され,3月下旬,急性左心不全にて入院.入院時よりI型優位のLDH高値,尿中ヘモジデリン陽性,血性ハプトグロビン10mg/dl以下と溶血性貧血の所見を呈していたが,直接,間接クームステスト陰性,赤血球膜酵素異常(-)赤血球膜抵抗異常(-)骨髄にも特記すべき所見はみられなかった.
貧血は血行動態悪化時,平行して増悪し,βブロッカーによる治療後,左室流出路圧較差の減少とともに軽快し,圧較差の増大が,赤血球の機械的損傷に基づく溶血性貧血の原因となる可能性が示唆された.
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