心臓
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研究会 第22回 理論心電図研究会 巨大陰性T波について 心尖部肥大型心筋症の巨大陰性T波の成因について
ベクトル心電図および空間速度心電図による検討
吉賀 攝松山 公明元永 一郎古賀 義則戸嶋 裕徳
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1989 年 21 巻 3 号 p. 337-344

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抄録
目的:心尖部AE大型心筋症(AH)の巨大陰性T波(GNT)の成因を,ベクトル心電図(VCG)と空間速度心電図(SVECG)を用いて検討した.対象:陰性T波-10mm以上かつ,スペード型左室変形を認めた36例〔HCM・GNT(+)群〕.陰性T波-10mm未満,非対称性中隔肥厚が見られた非閉塞性肥大型心筋症43例〔HCM・GNT(-)群〕.対称性の左室肥厚を認めた高血圧性心臓病68例〔HHD群〕.また対照群として健常者12例を用いた.方法:VCGはフランク誘導で記録し,SVECGでは,QRS,T環の,遠心脚,求心脚の描記速度ρ12,a,cの波高およびQ波から各々のピークまでの時間を計測した.結果および考察:QRS環ではHHD,HCM群でρ12の増大が見られ,またQ-ρ2時間の延長が見られた.GNT(+)群ではQ-ρ1時1間も延長しており,特に本群では興奮伝播過程の異常が推測された.T環のa波高は,GNT(+)群が最も大きく,その結果c/a比が減少しGNTが対称化すると考えられた.またQ-a,Q-cの間隔の延長もGNT(+)群で最も大きく,本群で最も著明な再分極過程の遅延がみられた.またQ-ρ2間隔に比しQa,Q-c間隔の延長がより強く,活動電位パターンの変化を伴っている事が推測された.以上の結果よりAHでは,肥大した心尖部心筋への興奮伝播過程の遅延および活動電位の変化が推測され,このために心尖部心外膜側の再分極過程が遅れ,しかもそれが心尖部に限局するため再分極ベクトルがcancellationを受けずに深いGNTが形成されるものと考えられた.
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