抄録
我々は連合弁膜症や三尖弁疾患例のうち三尖弁の変化の著明なものには積極的に生体弁による三尖弁置換術を施行しているが,僧帽弁と三尖弁との二弁置換例で術後肺動脈圧が著しく上昇し失った症例を経験した.48歳の男性で経過の長い僧帽弁狭窄兼三尖弁閉鎖不全例で術前肺動脈圧は44/24(30)でPp/Ps O.42であった.僧帽弁は27mm,三尖弁は31mmのいずれもISPXにて置換術を施行した.人工心肺からの離脱は容易であったが術後Ps/PsはO.8と上昇し一時抜管できたものの呼吸状態が悪化し再挿管となった.左房圧は術直後は低下したがすぐに上昇し中心静脈圧は再挿管の頃までは低いままで経過した.Pp/PsはO.9を越えしだいに多臓器不全となって術後24日目に死亡した.剖検では肺中細動脈の中膜の肥厚と問質の線維化が認められた.術前からの左心不全,僧帽弁狭窄解除の程度,肺血管病変の不可逆性進行,術中術後の肺血管収縮因子,肝障害や体外循環の影響などもその原因として考えられるが,長期の僧帽弁狭窄症の患者では左右心室のポンプ機能にアンバランスが生じており,これが術後の肺動脈圧の上昇に影響した可能性もあると思われた.