抄録
左心室造影上特徴的な所見を示した心筋梗塞後左室壁在血栓の3症例を経験した.
症例1は,前壁中隔梗塞で左心室造影上前壁に心室瘤を形成し,同部の心外縁と内腔の造影剤との間隔が通常に比して明らかに大きく,あたかも同部位の心室壁が肥厚したかのように見え(以下壁肥厚様所見),さらに内腔の造影剤が収縮期に壁内に入り込んで行くかのように見える所見を認めた.症例2は,前壁中隔梗塞で,左心室造影にて心尖部にdyskinesiおよび同部の壁肥厚様所見を認め,この症例でも内腔の造影剤が収縮期に壁内に入り込んでいくかのような所見を呈した.また,症例3は,やはり前壁中隔梗塞で,左心室造影上,心尖部に心室瘤の形成を認め,同部の壁の菲薄化と心内腔に突出する陰影欠損を認めた.3例とも血栓摘出術を施行し,血栓を確認した.
今回の3症例中,症例3では,左心室造影上比較的容易に壁在血栓を確認できたが,症例1,および2では,“壁肥厚様所見”に加え,“収縮期における内腔の造影剤の壁内への入り込み”という所見を認め,これが血栓の診断に有用であった,本所見は左心室造影では診断が困難とされる層状の血栓において認められた特徴的所見と考えられた.