1990 年 22 巻 5 号 p. 499-507
冠動脈造影法を用いて左前下降枝を対象としニトログリセリン冠動脈内注入および冠動脈形成術が狭窄末梢側血管径に及ぼす影響を検討した.
高度の狭窄病変があっても血流遅延を伴わない程度であれぼ,狭窄部末梢側の心表面冠動脈径は狭窄のない冠動脈と差はなかった.その機序として冠小動脈の拡張による予備能の動員ばかりでなく,造影観察することのできる心表面冠動脈自体の壁平滑筋トーヌスの低下が推測された.
硝酸薬に対する拡張反応は狭窄部末梢側で狭窄のない冠動脈に比べ低下していた.冠動脈形成術により狭窄部を解除すると冠動脈径は正常化した.このことは狭窄部末梢側の硝酸薬に対する拡張反応の低下が末梢冠血管のびまん性硬化によるものでなく,冠灌流圧の低下により生じていることを示した.