心臓
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臨床 同一施設で長期間追跡された原発性肺高血圧症の予後
抗凝固薬,血管拡張薬併用の有効性の検討
尾形 公彦大江 正敏白土 邦男滝島 任
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1990 年 22 巻 5 号 p. 508-514

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抄録

過去24年間に当科にて原発性肺高血圧症(PPH)と診断された19例を対象に,抗凝固薬と血管拡張薬の併用療法の長期予後に対する効果をretrospectiveに検討した.診断確定後,ワーファリンおよび血管拡張薬(ニフェジピン3例,イソプロテレノール3例)を投与していた6例を併用療法群(AV群),非投与の13例をコントロール群(C群)とし,平均4±4.8(SD)年の観察期間における両群の経過を比較した.初回検査時のNYHA分類,血行動態諸量には両群間で差を認めなかった.経過中,自覚症状の改善をみた例はC群15%,AV群50%であり,診断確定後の生存期間もC群では4.2±5.4年,AV群では8.9±5.'9年とAV群で大であった(p<0.05).心臓カテーテル検査を反復施行したC群4例,AV群4例(ニフェジピン3例,、イソプロテレノール1例)においても,初回検査時の血行動態諸量に差を認めなかったが,最終検査時の各指標は,C群では不変であったのに対し,AV群ではPAP,PVRがそれぞれ初回検査時の81±14%(p<0.05),69±17%(p<0.05)へと低下し,改善がみられた.
以上より,抗凝固薬と血管拡張薬の併用療法はPPHの長期予後を改善する可能性を有する.

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