心臓
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臨床 実物大立体モデルからみた右側大動脈弓の問題点
特にIII型解離発生要因としての弓部のヘアピン状カーブ
吉井 新平松川 哲之助神谷 喜八郎橋本 良一秋元 滋夫古屋 隆俊保坂 茂鈴木 章司上野 明
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1990 年 22 巻 5 号 p. 515-520

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抄録

右側大動脈弓の解離はこれまで5例の報告があり,全例IIIB型でまた左鎖骨下動脈起始異常を合併している.発生要因としてBodineらは右側大動脈弓の弓部の急激な湾曲を推定した.最近同様例を経験したことから,これを定量的に評価し,右側大動脈弓に伴う固有の問題点と解離発生との関連につき検討した.対象は本例と左鎖骨下動脈起始異常を伴う右側大動脈弓計5例で,方法はCT像を透明シート上に実物大に投影し,臓器別に色分けしてトレースし,スライス幅に応じ積層することにより臓器相互の立体関係をみた。実物大モデルは密度の濃いスポンジラバーを大動脈弓の各スライス像にあわせて切り,正確な位置で重ねて作成した.このモデルの弓部を正側面で捉えるよう投影し,得られた弓部の中心を通る曲線のうち最も急な回転半径を測定した.その結果全例で大動脈弓と周囲器官との立体関係を明らかにしえた.上行大動脈は直線的に上方へ向かい高い位置で右総頸,鎖骨下動脈を出し,急角度で下行する.その最小臨半径は20~31mm,平均24.2±4.8mmで左側大動脈弓例6例の34~49mm,平均39.7±5.8mmに比し有意に小さい(p<0.01).IIIB型解離例は右総頸動脈分岐後に解離が起こり,偽腔は右後方へ大きくカーブし,流れも多く,あたかもカーブを曲がり切れなくなったために解離したように見えた.以上,右側大動脈弓例では弓部頂上が急角度で,解離発生要因のiつとなりうると考えられた.

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