心臓
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症例 75歳まで生存した静脈洞型心房中隔欠損症の1剖検例
千田 宏司貞刈 暢代甲田 隆勝谷 雅昭頼高 朝子吉田 広海
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1990 年 22 巻 5 号 p. 521-526

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抄録

成人の先天性心疾患の中では,心房中隔欠損症が最も多いが,高齢者の静脈洞型心房中隔欠損症(SVASD)の報告はまれである.我々は75歳まで生存し,部分的肺静脈還流異常と左上大静脈遺残(PLSVC)を合併したSVASD例を経験した.症例は75歳,女性.65歳頃,息切れ,68歳頃,動悸を自覚.70歳時,さらに,浮腫出現し入院.聴診にて,駆出性収縮期雑音(Levine IV/VI)とII音の固定性分裂を認めた.心電図では,右軸偏位と不完全右脚ブロック,胸部X線では,心胸郭比は76%で,肺血管陰影の増強を認めた.両側の肘静脈造影でPLS・VCの存在と冠静脈洞への還流を認めた.心臓カテーテル所見では,高位右房でO2Step upを認め,肺体血流比1.95,肺動脈圧45/15mmHgで,高位右房から,直接,右中肺静脈へのカテーテルの挿入が可能であった.その後,心房粗細動を繰り返し,心不全にて死亡(75歳11カ月)した.剖検所見:右上肺静脈が右上大静脈,右中肺静脈が右上大静脈と右房の接合部に還流し,PLSVCの還流する冠静脈洞の著明な拡張と卵円窩の上方に静脈洞型心房中隔欠損孔(13×15mm)を認めた.

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