心臓
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症例 鞍状塞栓をきたした左房内腫瘤の1症例
鈴木 幸園徳永 慎吾田巻 俊一中江 出山里 有男青嶋 實村上 知行三木 真司岩瀬 知行河合 忠一
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1990 年 22 巻 5 号 p. 527-532

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抄録

症例は58歳の男性.めまいを主訴に来院.入院当初,一過性脳虚血発作を疑ったが,心電図上1,II,aVF,V2~V5の陰性T波を認めるため超音波心断層図(2DE)を施行,左房内に有茎性腫瘤を認めた.肺動脈造影後期相の左房・左室造影でも腫瘤が認められ,拡張期に左室に陥入した.以上より左房内血栓または腫瘍と考え手術待機となったが,心臓カテーテル検査後5日目に両下肢の激痛が出現,両大腿動脈触知不能となった.この時点で2DE上,左房内腫瘤は消失しており,腫瘤の茎断裂による鞍状塞栓と考え塞栓除去術を行った.本症例で茎断裂を生じた誘因として,茎に負荷が加わったこと,安静が十分に保てず,高血圧・嘔吐などが認められたことが考えられた.左房内腫瘤診断後はこれらの誘因に注意し,緊急に手術を行うことが,肝要と思われた.

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