1990 年 22 巻 5 号 p. 544-549
症例は15歳女子.心電図異常(QV1)にて当科紹介となった.安静時心電図ではPQ時間は正常であったがΔ波を認め,運動負荷にて上室性頻拍が誘発された.この頻拍はΔ波の有無にかかわらず開始あるいは持続すること,PQ/QP比約0.5であり,停止時のPPおよびPQ時間の態度などより心房性の頻拍症と考えた.
臨床電気生理学的検査では,高位右房期外刺激法にてAH時間は延長するがHV時間は短縮したまま一定であり,fasciculoventricular fiberの存在が考えられた.またdual A-V nodal pathwaysの合併も認めた.しかし,頻拍はそれらとは関係なく誘発されることなどよりatrial reentrant tachycardiaと診断した.多彩な体表面心電図所見をとり,それらより頻拍の発生機序が推測可能な興味ある症例であった.