1990 年 22 巻 5 号 p. 550-556
難治性の持続型心室頻拍を呈した拡張型心筋症の1例においてelectricalablationを施行した.心室頻拍(VT)は,各種抗不整脈剤に対し難治性であり,心内膜マッピングでVTの体表面QRS波形に先行する電位は認められなかった.VT中左室後側壁の刺激によってのみentrainment現象を認めた.ペーシング中VTのQRS波形は不変で,刺激中止からVT再開までのreturncycleは各ペーシング周期と一致し,刺激スパイクはVTのQRSの開始後に認めた.これらの所見を呈するペーシング部位は2cm以上に渡っており,slow conduction zoneと考えられたが,同部位への100Jまでのelectrical ablationは不成功であった.術中のマッピング所見では最早期興奮部位は後壁中央部の心外膜側に認められ,同部位の全層にわたる心筋切除後VTは誘発不能となった.本症例はelectrical ablationにおける通電部位とリエントリー回路との関係で示唆に富む症例として報告した.