心臓
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臨床 冠攣縮性狭心症と不整脈
エルゴノビン負荷時の検討
新井 芳行清水 賢巳末松 哲男杉原 範彦北 義人清水 邦芳源 雅弘新田 裕川腰 肇荒木 勉竹田 亮祐三船 順一郎
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1990 年 22 巻 9 号 p. 1034-1038

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抄録

器質的狭窄を持たない冠攣縮性狭心症例を対象としエルゴノビンにより発作誘発を行い,その際の心拍数,不整脈について1)冠動脈の左右別による差があるか否か?2)冠攣縮時と解除時で差があるか否か?について検討した.対象と方法:亜硝酸剤が有効である労作時または安静時の胸痛発作を有し選択的冠動脈内エルゴノビン負荷試験により冠動脈の完全または亜完全閉塞された51例(男性44例,女性7例):54病変に対し検討を行った.50%以上の器質的狭窄を認めた例は対象より除外した.結果:1)心拍数は右冠動脈攣縮時に64.3±14.2から59.1±13.1へと有意に減少し(p<0.05),左冠動脈攣縮時には増加傾向を示した.2)房室ブロックは右冠動脈攣縮時に20.5%と高率に認められたが,左冠動脈攣縮時には認められなかった.3)心室性期外収縮は右冠動脈i攣縮時に20.5%,解除時に13.6%,左冠動脈攣縮時に10.0%,解除時に10.0%と高率に認められた.心室性期外収縮については冠攣縮による閉塞時と攣縮解除時で頻度および,重症度に差がなかった.また冠動脈の左右別による差も認められなかった.器質的狭窄を持たない冠攣縮性狭心症の発作誘発時には高率に不整脈を認め,また重症不整脈の発生もあり,厳重な注意が必要と考えられた.冠攣縮性狭心症例における不整脈の治療と予防には,冠攣縮性狭心症そのものの治療と予防が必要と考えられた.

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