1990 年 22 巻 9 号 p. 1045-1049
狭心症を合併した冠動脈一気管支動脈異常交通症の1例を経験した.冠動脈造影上,左右冠動脈に有意狭窄を認めなかったが,澗結節動脈から異常血管を介して左右の気管支動脈が造影される所見を認め,冠動脈一気管支動脈異常交通症と診断した.本症例は運動負荷心電図,運動負荷タリウム心筋シンチグラフィーで運動時に右冠動脈支配領域の心筋虚血が確認され,異常交通を介する冠血流のsteal現象による可能性が示唆された.従来から報告されているような先天性チアノーゼ性心疾患,慢性閉塞性肺疾患,肺血流障害などの肺血流減少をきたす基礎疾患を認めない冠動脈一気管支動脈異常交通症は本症例が初めてであり,本交通症の存在自体と心筋虚血との関連について検討するうえで極めて貴重な症例と思われた.