心臓
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症例 冠静脈洞憩室の1例
王 郁英片山 和裕松崎 益徳藤井 崇史河野 通裕山岸 隆小川 宏尾崎 正治松田 泰雄楠川 禮造
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1990 年 22 巻 9 号 p. 1050-1054

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抄録

症例=52歳,男性.49歳時,健診にて心肥大を指摘されたが,自覚症状なく放置.52歳時,健診にて心房細動,心エコー図にて左室後壁背方に異常なecho free spaceを指摘され,精査目的で来院.胸部X線写真では心胸比59%,心房細動を呈し,聴診では,心尖部に最強点を有するLevine II/VIの収縮終期雑音を聴取.心エコーでは前記所見の他,右房内血栓,II.のMRを伴う僧帽弁前尖逸脱を認め,心プールシンチでも左室後壁背方に異常な腔を認めた.心血管造影では冠動脈は正常であったが,冠静脈洞の右房開口部は左室後壁背方にまで嚢状に拡大しており,冠静脈洞憩室と診断した.
本疾患の報告例は少ないが,WPW症候群の合併や重篤な不整脈の発生,また突然死をきたした例が報告されている.一方,憩室の外科的摘除により不整脈を消失させうるとの報告もあり,治療方針について慎重な検討が必要である.

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