1990 年 22 巻 9 号 p. 1055-1060
症例は53歳,女性.動脈管開存症で経過観察中,1988年12月末より発熱が持続するため近医入院となった.血液培養にて連鎖球菌が検出され,大動脈弁逆流により心不全徴候をきたしたため当院転院となった.超音波検査にて肺動脈内巨大疵腫,大動脈弁の穿孔およびバルサルバ洞破裂による大動脈一左房短絡血流が認められた.動脈管開存症に合併した感染性心内膜炎と診断し,感染と心不全に対して強力に薬物治療を行ったが,心不全が急速に増悪したため感染活動期に緊急手術を施行し,救命しえた.動脈管開存症の感染性心内膜炎で本例のように右心系のみならず左心系にも炎症が波及した重症例の報告は少なく,その治療に急性期手術療法が効を奏した1例であった.