心臓
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症例 経皮的冠動脈形成術(PTCA)により完全房室ブロックが消失し,血行動態の著明な改善を認めた右室梗塞の1例
鈴木 洋松原 仁志松崎 明広村上 幹高山田 斉嶽山 陽一片桐 敬
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1990 年 22 巻 9 号 p. 1067-1073

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抄録

症例は,73歳,女性.昭和63年9月,冷汗,悪心,嘔吐を伴う前胸部の圧迫感が出現し,意識低下もきたして当科を受診した.受診時,意識混濁し,脈拍は毎分40で整,血圧は触診で74mmHgとショック状態を呈していた.肺野にはラ音は聴取しなかったが下腿に浮腫を認めた.心電図上,心房細動,完全房室ブロック,II, III, aVFおよびV3R~V55RでST上昇を認め,心臓カテーテル検査では,肺動脈梗入圧13mmHg,右房圧12 mmHg,心係数1.8l/min/m2で,右冠動脈Seg. 1で完全閉塞を認め,右室梗塞を合併した急性下壁梗塞と診断した.ドーパミンの点滴静注および右室ペーシング下に直ちにPTCAを施行し,十分な再疎通が得られてからは,完全房室ブロックは消失して洞調律に復帰し,II, III, aVFのST上昇も入院時より著明に低下し,右房圧も7mmHgに低下して心係数は2.3l/min/m2に増加し,血行動態上も著明な改善を認めた.その後の経過も順調で,慢性期の心電図では,III, aVFでQS型を呈するもののIIでの異常Q波は認められなかった.また慢性期の心臓カテーテル検査では,左室および右室の壁運動異常も認められず,PTCAによる拡張部は十分に開存しており,血行動態指標も全て正常であった.以上より,完全房室ブロックや右室梗塞を合併した急性下壁梗塞例には,direct PTCA等による発症早期の血流の再灌流による心筋保護が,特に重要であると考えられた.

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