1990 年 22 巻 9 号 p. 1099-1103
66歳,主婦。家族歴に心筋症なし.19歳より気管支喘息の治療として1日数回のエピネフリン皮下注射(1回200から700μ 齢最高1,000μg)を約20年間継続した.47歳頃,心電図で心肥大を指摘され,63歳時安静時の胸部圧迫感を自覚した.既往に高血圧なし.入院時,血圧168/72mrnHg(以後130-150/70-90),IV音(+)血清コレステロール325mg/dl,血液・尿カテコールアミン正常,肺機能は一秒率36%,胸部X線で肺過膨張・心胸比51%,心電図は洞調律・QRS高電位(RV11.4,SV13.0,RV53.6各mV)・陰性TV3-5,心エコー図で心室中隔/左室後壁馴8/8mm,冠緬脈造影で龍の狭窄なし。左室造影で収縮正常・駆出率78%,カテーテル検査で心室内圧較差なし,左室心筋生検で,心筋肥大・錯綜配列・不規則斑状線維症を認めた.肥大型心筋症と診断,外来で経過観察中.
心筋病変はカテコールアミン心筋炎の成れの果てとして矛盾するものはないが,非対称性中隔肥厚には喘息発作時の右室負荷,エピネフリンによる一過性左室負荷などの関与も考えられる.肥大型心筋症のカテコールアミン病因説を支持する症例と考えられる.