心臓
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症例 特異な心エコー図所見をみた激症型急性心筋炎の2例
三木 宏志中川 義久佐藤 幸人中村 拓郎野田 倫代高橋 正明
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1990 年 22 巻 9 号 p. 1104-1110

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抄録

激症型急性心筋炎の2例:症例1は,45歳女性.ショックと繰り返す心室頻拍のために入院翌日死亡した.症例2は,16歳男性.入院時心係数1.75と低値を示したが重篤な不整脈等の合併なく順調に経過した.2例とも組織による心筋炎の確定診断がついた.症例1の心エコー図は,中隔堅厚10mm,後壁壁厚11mm,LVEF39%で,心嚢液貯留を少量認めた.症例2では,中隔壁厚21mm,後壁壁厚16mmと著明な心筋の腫大を認めたが,人院22日目にほぼ正常となった.LVEFは入院時32%であったが,9日目には77%と改善した.入院時より心嚢液貯留を認めたが,29日目にはほぼ消失した.この2症例の左室壁運動はびまん性に低下していたが,注目すべき所見は,局所壁運動において,(1)収縮期に外側へ突出する領域が認められた.(2)拡張期に内側へ陥凹する領域が認められた.(3)収縮と拡張の時相が各領域で一致していなかった.(4)上記所見は必ずしも冠動脈の支配領域とは関係しなかった.ということであり,これらの所見は“左室全体の奇異性運動”と呼べるものであろう.これは各領域の心筋の炎症の程度の差による可能性が考えられた.この激症型急性心筋炎の2例に認められた“左室全体の奇異性運動”は,急性心筋炎の診断に重要であると思われた.

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